むかし、むかし、あるところにおじいさんとおばあさんがおりました。
毎日毎日おじいさんは山へ芝刈に、おばあさんは多摩川へ洗濯に行っておりました。
ある日おばあさんが、多摩川でせっせと洗濯をしていますと、川上から大きな着ぐるみが
どんぶらこ~、どんぶらこ~
と流れてきました。
「おやおや!これは見事な着ぐるみだこと!おじいさんへのいいおみやげになるわ!
うちへ持って帰りましょう!」
おばあさんはそう言うと、腰をかがめて大きな着ぐるみを取ろうとしました。
が、おばあさんは歳のせいもあり、大きな着ぐるみをピックアップし損ねてしまいました。
大きな着ぐるみは、そのままどんどん下流へと流れていきます…
そしてそのまま東京湾まで流れ着いてしまいました。
するとそこを歩いていた、ある会社の採用担当者がその着ぐるみを拾いました。
すると中から今年で大学を卒業する学生が出てきました。
とりあえず採用担当者は、今までの経歴を聞いてみたりしました。
しかし話があまりまとまっていなかったり、面接の合間でたばこを吸いに行ったり、かなり雑な部分が目立つ学生でした。
採用担当者は迷いましたが、それを持ち帰ることにしました。
理由としては、とりあえず根性だけはありそう。
そこだけは使えそう、という理由でした。
採用担当者はその子を、頭がゆるそうなので
「ゆる太郎」
と名付けました。
ゆる太郎は都内のある会社に勤めることになりました。
ゆる太郎はなぜか自信満々でした。
それは、今まで田舎に暮らしてきて、そこでの小さな競争に勝ってきた経験があったためです。
東京には憧れがあったものの、やってみれば何とかなるであろうと安易に考えておりました。
入社すると、ゆる太郎にはイヌ、サル、キジという三人の同期がいました。
ゆる太郎は、最初にまず同期の中で一番になるつもり満々でした。
しかしこの三人がとても優秀でした。
イヌはまず非常に従順でした。
言われたことをそのまま守るため、飲み込みも速いものでした。
また誰にでも愛想が良いので、みんなから好かれていました。
その点ゆる太郎は、言われたことをあまり聞いていませんでした。
そのくせ何度も聞き直すので、先輩に面倒臭がられました。
そのくせイヌの人間付き合いは、媚びを売っているようで、ゆる太郎はそれがどうも好きにはなれませんでした。
次にサルはユーモアがある人でした。
お調子者のサルは、みんなの前でおどけてみたりできる人でした。
他にも仕事でピンチの時は、機転の利いたアイデアで乗り切ったりもしました。
その点ゆる太郎は、人前でバカになることができませんでした。
また仕事でピンチの時は焦ってしまい、ゆる太郎はうまく対応できないタイプの人間でした。
そしてキジは、俯瞰的な視点を常に持っている人でした。
常に仕事を先回りして進めることができました。
その点ゆる太郎は、常に行き当たりばったりで仕事をしていました。
そのためミスは多く、何度もやり直して効率は悪いものでした。
そうしているうちに、毎月もらえるキビ団子の量にも差が付き始めてきました。
ある日会社から、先輩上司と一緒に鬼ヶ島へ鬼退治に行くように言われました。
イヌ、サル、キジはそこでも、先輩社員たちと大立ち回りで大活躍です。
一方ゆる太郎は、振り回した刀が先輩にあたりそうになり、めちゃくちゃ怒られていました。
端っこに座りながら、ゆる太郎は気が付きました。
「ああ…俺はこの物語の主役じゃないんだな。」
初め自信満々であったゆる太郎は、ようやく身の程を知ることになりました…
そしてここで話が終われたらどれだけ幸せでしょう…(泣)
その後も様々な苦労は続いていきます。
またそれは後からのお話…
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